そろそろ明るい太陽が沈み始める時間。
世界のすべてが赤く染まる。
その風景を彼女は宿の窓越しに見据えている。

「こういうのを綺麗と言うのか」
一言呟くと野宿になれた身体はふかふかのベットへと納まった。



*ココア*


数分後1人の青年が部屋の前に立っている。
「おーいジェンド〜?」
金色の髪を持つ青年はドアの向こうにいるはずの名を呼んだ。
だが返事が返ってこない。
「あれ??居ないのか?入るぞ」
少し重みの感じる扉を開き1歩ずつ足を踏み入れた。
日が傾きかけている為か部屋は薄暗い。
周りがよく見えないので慎重に進んでいく。
するとべットの上で何かが動くのを見た。



「・・・・いた」



近づくとそこには今まで探していた人物が寝ている。
この距離ならいつも目を覚ましているのに今日は全くそんな気配がない。
彼は少し微笑み眠っている彼女に毛布をかけた。





「やっぱり疲れてたのか」





そう言うと彼はその場を後にした。




















「・・・んっ」
うっすらと瞳を開く。
彼女は首をきょろきょろとまわす。
あたりはもう真っ暗だ。
先ほどまで夕方だったのにと窓を見つめている。
この様子からしてまだ完全に覚醒していない。


「おはようジェンド」


「!?」
声をかけられびっくりしてジェンドは飛び起きた。
「よく寝てたな〜」
訳がわからず呆けているとカイは感心したように言った。
「カイ・・・・私は寝てたのか?」
「うん。ぐっすりと」
真剣な顔をしておもしろい質問をしてきたのでカイは笑いながら答える。
その様子にジェンドはムッとした顔をした。
「十六夜は?」
「んーっジェンドが起きるの待ってるって言ってたんだけどついさっき寝たよ」
カイの目線の先を追うと少年が寝息をたてているのが見えた。
少年は微かに笑っている。
食べ物か何かの夢でも見ているのだろうか・・・。










そんなことを考えてたらどこからともなく甘いにおいが漂ってくる。
「はい。飲む?」
手渡されたのは1つのカップ。
さっき嗅いだにおいの原因はこれのようだ。
なかを覗くと茶色の液体が入っている。

「?」

ジェンドは首をかしげた。
(苦いやつか?いやあれはこんな甘いにおいはしないし。色もなんとなく違うか。)
カップをずっと見つづけている彼女を見ておかしく思いカイは顔を近づけた。
「どうしたジェンド。・・・もしかしてココア嫌い?」
「ココア?」
「知らなかったのか〜これなココアっていって甘くてうまいんだぞ。疲れたときに俺よく飲むんだ♪」
カイは穏やかに笑うとカップに口をつけた。
「ふーん」
そう呟くとココアを一口飲んだ。


「・・・っ甘い」


「やっぱり?ジェンドには甘すぎるかもって思ってたんだけど今日はそんなこと言ってられないかなって」
「どういう意味だ」
「だって疲れてるだろ?疲れてるときには甘いものがいいんだぜ」

ジェンドは一瞬で固まった。
「ジェンド?」
固まってしまった彼女の目の前でカイは手をひらひらと振る。
「・・・・・・・何故そう思う」
「なんでって見てたらなんとなく」
不信がって見るジェンドにカイはケロっとした顔でいった。





比較的彼は人の異変によく気がつく方だ。
少し様子が違うと心配で一日中目を離さないようにしている。
その対象が今日は自分だったと思うと・・・・。
ジェンドはいきなりベットから立ち上がるとココアを喉に流し込んだ。
「ジェっ!!おい!!!」
突然の行動に驚きつられてカイも立ち上がった。
彼女はいまだ飲み続けている。
そして全部飲み終わるとカイにカップを押し付け、ベットへ倒れこんだ。
どうやら相当甘かったようだ。


「大丈夫か?」


「・・・り」


カイは自分の耳を疑った。
彼女の口からこんなのが聞けると思っていなかったからだ。
「えっ何?」
もう一度確認しようと慌てて問いかけた。










「おかわりって言ってるんだよ!!」










顔を枕に鎮めたまま叫んでいる。
表情を知られたくないようにしているみたいだが耳まで真っ赤なので隠してる意味がない。
「ジェンド〜誰だって疲れたりするんだからさ。そんなに・・・うぉっ」
思わず吹きだしそうになるがぐっと堪え、顔だけ笑って彼女に近寄ると・・・見事に枕が顔面に直撃した。
「うるさーーい!!」
「はいはい。おかわりだろ?もう少し甘くないの作ろうか」
顔にへばりついていた枕を返すとココアを作りに歩き出す。
返事がないので振り返るとまだ顔の赤いジェンドは声を出さずに頷く。
それに答えてカイはにっこり笑うとドアを開けて出て行った。





それはある晩の宿での出来事。








+++Postscript+++




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