666HITのドク様に捧げます。




「う・・ん・・・・」
寝付いてまださほど経ってもいないというのに不意に目が覚めた。
何故か体が重たい。
上にでも大きな岩がのっているみたいに・・体が上手く動かなかった。
だんだん意識がはっきりしてくる。
改めて今の状態を考え直す。
それなのに体はまだ寝ぼけたままのように動かなくて・・・・。


それはさすがにまずいじゃないか!!


焦ってきて慌てて目を開けた。











「あっ起きた?」











「へ・・・?」











眩暈











開いた目の前に栗毛の見慣れた顔があった。
いつもの無邪気な笑顔を見せて笑いかけてくる。




「なっな・・・」
いまいちこの状況が理解できず口が上手く動かない。
「なんでここにって?付き合ってもらおうかなって」
そういいながら取り出したのは酒。
見た目からしても中々高そうな一品だ。
「お前、それ。・・・よく見つからずに買えたな!」
見つからずと言うのはレナのことである。
この間、ルゴルの村で一晩中酒盛りをして、次の日の戦闘が悲惨だったためレナから当分の間禁酒令がでたとこだったのだ。
「みんなが寝静まった頃なら買いにいけるだろ?遅くなるんだけどさ」
バッツは得意気に言った。
「そうか、よく考えたらそうだよな・・・・っていつまでそこにいる気だ」
今やっと気づいたけど、こいつが乗っかってたから体が動かなかったんだ。
なーんか、顔が近いなぁって思ったら・・・このバカはっ。
「たまにはいいじゃん。起きたら顔があるんだぜ、びっくりしておもしろいだろ?」
ニコニコ笑いながら軽く唇にキスをするとバッツはベットから降りた。
オレは脱力した。
なんでこいつは毎度毎度こうなんだろう・・。
何に対してもいきなりだ。
酒を買いに行くんなら前もって言ってくれれば一緒に行くし、そうじゃなくても寝ないで待ってるのに。






自然体すぎるところがある。
それがこいつらしいといえば否定できないが・・・。
振り回されるこっちの身にもなってみろってんだ。
普通に抱きついてくるし、さっきみたいなこともまるでついでのようにしてくる。
ひとり慌ててるこっちがバカらしくなってくるじゃないか。






バッツはグラスを持ち近づいてくると思いっきり吹きだした。
「な・・・・なんだよ!?」
「ふっくく・・だって、か〜わいい〜ファリス。真っ赤、真っ赤!」
「うるさい!!お前が悪いんじゃないかっ」
急いで言い返してみるが負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
段々何言っても勝てない気がしてきた。
口元を尖らせてそっぽを向いているとグラスが傾けられる。
受け取ると淡い芳香が鼻孔をくすぐった。
明日に響かない程度の軽めのものを選んだようだ。
すんなりと喉を通し後味もいい。
味からしても充分値の張るものだということが見て取れた。
「なぁ、これ・・・・」
「たまにはいいだろ?こういう酒も」
高かっただろ?という問いかけは声にならないまま出番を失ってしまった。
言い損なった言葉を口の中でパクパクさせながら次の言葉を考えたが何も出てこなかったので仕方なしにグラスに口をつけた。
こんなとき、自分の口下手さが煩わしくなる。
バッツもあまり自分のこと話さないほうだからこういう沈黙がよくおきる。
心地いいはずの静寂が今日は少し居心地が悪い。
何か話さないとと思考をめぐらせるがいい言葉が出てこない。
そんな変な気分を味わっているとき隣に腰を下ろしたバッツが口を開いた。
「こうしてさ、ゆっくりファリスと酒飲みたかったんだ」
「え?」
「ここんとこ色々忙しかったし、レナに酒禁じられたりしたし。こうやってふたりでゆっくりくつろぐってことしてなかったからいいかなって」
「そ、っか。そうだな」
真剣な声音の後に底抜けした笑顔を向けられると熱を出したみたいに頬が熱くなった。
辛うじて返事は返せたもののいつまで経ってもこいつに対しての抗体はオレの中には出来ないらしい。
顔が赤くなっているのにバレたら大変だ。
急に俯いたのがいけなかったのかバッツが心配そうにこちらを覗きこんだ。
「どうした?ファリス」
「いや、その・・あんまり近くだから」
言い終わってからオレは自分自身がこんなに間抜けだったことにはじめて気づいた。
バッツの口元がニヤリと歪んだのが目の端に映る。
小さな子供が悪戯を思いついたような嬉々とした表情。



終わった・・・。



もうひとりの自分がそう告げた。
「少しくらい独り占めさせてくれたって罰は当たんないと思うけど?」
こうなった時点でオレの負けは決定している。
だけど、それを素直に受け入れないってのがオレという生き物だ。
なんとか反撃に出ようとするが気の利いた言葉がすんなりと出てくるはずもなく・・・。



「ほ・・ほら!部屋広いんだからもっとさ、有効に使おうぜ」
「くっ・・・あははっっ相変わらずおもしろいこと言うな」




笑い声を上げながらバッツはオレの手をとって絡ませた。
徐々に体がこっちに向かってくる。
絡めた手にバッツは唇を寄せると軽く触れた。
小さな反応を見せると微笑を浮かべながら顔を近づけてきた。
オレの目の前が茶色で染まる瞬間バッツが触れる。
さっきよりも心臓が跳ね上がり、全身に熱がこもるのがわかった。
唇を離すと彼は額をくっつけて瞳を開けた。
真っ青な綺麗な瞳が映る。
彼はその青を細めてめいいっぱいの笑みを見せるとこう言った。
























「・・・・もう一回しようか?」
























オレはこいつに一生勝てない。











そう思うと眩暈がした。





+++Postscript+++


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