ぱちぱちっと明るい火花が飛び散る。
寒さを和らげるための強めの酒を一気に呷って俺は笑みを漏らした。
「おいおい、ここで寝るなよ?風邪引いちまうぞ」
ついさっきまで4人で火を囲んで話をしていたはずなのにスープカップを持ったままクルルは首を揺らしている。
レナもまだ意識はありそうだが目が半分閉じ始めている。
この旅をはじめてからなるべく野宿は避けてはいるが今回はどう足掻いても村には着けそうになかった。
女の子だし、ベッドで寝かせてあげたいんだけど・・こればっかりは。
これを口にするとこの少女たちは猛反発を起こすので出さないようにしているけど。
気にしてしまうのだ、やっぱり。
コップの底に残っていた酒を喉に流すと俺は立ち上がった。
「ほらクルル、つかまれ。レナは一人で大丈夫か?」
クルルを抱えこむとレナはつられて立ち上がり、テントへと歩き出した。
・・・うーん、完璧寝ぼけてるかも。
「お、ダウンしたか?よかった。寝床用意できたとこで」
「いつも悪いな」
テントから顔を出したファリスは2人の姿を見ると苦笑を見せた。
俺からクルルを受け取るとそっと毛布の上に寝かせる。
レナをその隣に導き、おやすみと声をかけてファリスはテントを出た。
「寝た?」
「ぐっすりだな」
「まったく・・野宿になるたび夜更かししたがるんだから」
弱まってきた火に新しい小枝を足して空気を入れながら俺は口を開いた。
野宿なんて疲れがなかなか取れないのだから早めに寝たほうが絶対良いのにあの2人はいつも遅くまで起きていようとするのだ。
「気を遣ってるんじゃないか?」
「何に?」
返ってきた言葉に俺は素直に疑問を口にした。
ファリスがそんなこと言うなんて・・ちょっぴりびっくりしたとか黙っておこう。
「どー考えてもお前にだろう」
「なんで?」
ファリスは大袈裟に溜め息をついた。
明らかに俺のことバカにしてる。
しょうがないだろ。
本当にわからないんだから。
「お前が見張りしてるからだろうが」
ますますわからない。
俺が見張りをしたらなんであの2人は夜更かしするんだ?
もしかしなくても信用されていないのか!?
「本当に気づいてないのか?ったく・・見張りをお前が譲らないからあの2人も付き合おうとしてるんだろ」
気づけよバカ、と彼女は首を振った。
「・・・俺寝てるぞ?」
少々考え込んだ後バッツは真剣な顔で言った。
俺、寝てるよ?
疲れ取るくらいは絶対。
「ああ、寝てるな。あの2人よりは寝てないけどな」
俺の言い分をファリスは否定しない。
じゃあ、何が駄目なんだ?
2人より寝てないのは当たり前だろうが・・俺が見張りしてるんだし。
それにあれ以上寝たって良いことないじゃないか。
「でもあれ以上寝ると逆にだるくなるだろ」
「オレもそうだけど、レナとクルルはオレたち以上に寝ないと疲れがとれないから」
「そりゃ当たり前だろう。2人は長旅なんて初めてなんだから」
「だから気を遣っているんだろうが」
「・・・・・あ、そっか」
ぽんと手を叩いた俺にファリスは脱力したようだ。
「そっかぁ・・心配かけちまったのかな?」
思わず笑みが漏れた。
なんか・・・・こう、笑いが止まらない。
「なんだよ。気持ち悪りぃな」
気持ち悪いとか!なんか今日はひどいぞファリス。
「いや、心配されるとか何年ぶりかなぁって思ってさ。いいもんだよな」
「何じじくさいこと言ってんだよ」
「じじ・・っって!!オイ!!!」
「あー・・・悪かったって!機嫌直せ、ほら」
そう言って彼女はまだ結構残っている酒瓶をこちらに差し出した。
全然謝っているように見えないんですけど。
物でつるなんて今じゃガキだって騙されないぞと思いながら俺はコップを前に出す。
この右手が憎いぜ。
ニヤニヤしながらファリスは酒をコップに注いでいった。
今回も長い夜になりそうだ。
E N D
+++Postscript+++
ふいに日常が書きたくなってだらだらと書き始めました。
あったかもなぁというそんな日常です。
バッツとファリスは睡眠時間は短いし、眠りも浅いはず。
逆にレナやクルルはやっぱり野宿にはなれないと思う。
そんな感じからこの話ができましたv
こういうときの野郎は鈍鈍デス!
次の日酒盛りをしてたことがバレてレナに怒られるの希望で。(笑