風の声






陽だまりの午後。
明るい日の光が会議同へと続く回廊を照らしていた。

もう随分と暑くなってきてしまった。

目が眩むほど輝く太陽を見つめながら彼女は思う。

あの日からもうすぐ2年。
いつまで経っても連絡は来ない。
容易なことではないとわかっていたけど・・・。

結果が出るまで手紙は出さない。と言っていた。

そう、約束した。

納得したのだ。

でも、それでも・・心配で堪らない。



また、離ればなれになってしまうのじゃないかって・・・・。
まだまだ話したいことはたくさんあるのに。



15年ぶりに再会したあの人は今も元気にしているでしょうか?



額に滲む汗を拭いとり、永遠に続く大空を見上げた。



どこかでこの空を見ているかしら・・。
ねぇ、捜しものは見つかった?



一緒に帰ってきてほしいと思う。
だって、死んだなんて私は絶対信じないもの。
4人で旅をしたあの頃のように人懐っこい笑顔を浮かべて帰ってきてほしいの。
少々騒がしくなるかもしれないけど、静かよりはマシよね。
賑やかだった旅のことを思い出して自然に口元が綻ぶ。



何もかもが新鮮だったあの頃は、何をしても楽しかった。



とても辛い旅だと思ったこともあった。



でも、あのまま暮らしていれば出会えなかったものに出会えた。



今では全てが良かったと思える。









「・・・っ」

突然ゴっと強い風が彼女を襲う。
よろけた体を白亜の柱に預けた。
彼女の身を包んだ風は体を透りぬけ空へと流れていった。


耳に何かを残したまま・・。





「すごい風でしたね。・・・・どうかしました?」

2,3歩前を歩いていた青年が振り向き様に声をかけた。
すぐに返ってくると思った返事が聞こえなかった。
彼女は呆然と空を見つめながら固まっている。

「レナ?」

このような表情を見た憶えがなかったので心配になり近寄って声をかけた。

「あ、なんでもないの。ただ・・」

「ただ?」







「やっと、あなたを紹介できるかもしれないわ」

そう言いながら彼女は咲き誇った大輪の花のような笑みを見せる。
何ことか全くわからなかったが、つられて青年も破顔した。
彼女が嬉しそうにしているだけでよかった。
最近、元気がないように見えたので心の中で安堵の息を吐く。




「それは楽しみです。さぁ、行きましょう。みなさんがお待ちですよ?」

「そうね」



2人はそろって歩き始めた。
彼女は真っ青な空を見上げながら小声で呟く。








聞こえたの。



懐かしい声が・・・。



笑っていたのよ。



あの頃のように。



あんな笑い声、聞き間違えないわ。



2人一緒にいるのね?



もう、早く帰ってこないと拗ねるわよ?



















「待っているわ。姉さん、バッツ」








Photo by 「NOION」



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