「カケラ」





声が・・声が聞こえる。


遠いところで微かに。


誰だろう?


叫んでいるのは誰だ?








体は動かなかったが、目は開いた。


視界に飛び込んできたのは 





漆黒。





一寸先も見えない闇の世界。





ぼんやりとした頭の中で思った。


ああ、ここは・・。



わかる。



嫌な思い出しかないけど。


でも、唯一結果を残せた場所で。





そうだ・・。





俺はここで力が抜けて・・・動けなくなって・・・・・。



それから。



それから・・?








ああ、また声が聞こえる。


少し大きくなってないか?


どこかで耳にしたような・・・。





力を入れると上体が起きた。


満足には動けないがさっきよりはマシだ。


ゆっくりと腕を膝の上に乗せた。


握り拳が目に入った。


左手に何か入っている。


力を入れても動いてくれない。


鍵がかかっているように・・・。


何をしても開かない。


俺のものじゃないみたいだ。








溜息をつくと左手のことは諦め、顔を上げる。


相変らずそこは深い闇のままで。





俺は・・何かしなくちゃいけなかった気が・・・・。



何を、だろう・・?



ぼんやりして上手く頭が働かない。



でも、



何か、そう何かなんだ。








「・・・!!」








今、呼ばれた気がした。


よく聞こえないけど、絶対呼ばれた。





起きろ、俺。





立ち上がれ。





頼むから立ってくれ。





待っているんだ。





・・な人が・・・・。








ずっと待ってくれている。











石のように足が重い。


摑まるところなんかどこにもない。


立たなきゃ・・。


行かないと。


ぐっと踏ん張ると危なげながら立ち上がれた。


大量の汗が体中を流れていく。





行こう。





踏み出した一歩は隣の足に縺れバランスを崩した。


「・・・・・?」


くると思った衝撃はいつまで経ってもこない。


反射的に瞑った目を開けた。


ついさっきまであった地面はどこにもない。



浮いている、のか?



自分が立っているのか寝ているのかさえわからない。


辺りを見回すと変わらず闇は果てしなく続いている。


でも、どこか違う感じがした。


すると視界の中心に小さな光が現れた。








手・・届きそうだな。








限界まで腕を伸ばすがギリギリのところで空を切る。








「もう、少し・・・」








何度も、何度も伸ばす。








あと、少しなんだ。











少しで・・・・。








指先がちょんと光に触れた。





「・・・っ!届いた!!」





一気に闇から光の世界になった。


真っ白な光が体を優しく包む。


眩しすぎて目が開けてられない。





上がっている。





心地よい浮遊感が体を襲う。





変な感じがしたが自然とそれを受け入れられた。




















声が、聞こえた。





今までよりもずっと大きい。





なんだ、また泣いているのか?





いい加減素直に認めたらいいのに。





どうせまた真っ赤になって言い訳するんだろ?








浮遊感がなくなり、体全体が温かかった。


わずかに腕が動いた。


布の擦れる音がする。


ベットに寝ているんだ、俺。


瞼が重いな・・でも起きなきゃ。


ゆっくりと瞳を開ける。





やっぱり泣きはらした顔がそこにあって。





なぜか可笑しくって口元を綻ばせた。





瞳を大きく見開いて彼女は俺を見つめていた。











「ただいま、ファリス。」


「・・・・っう・・バカやろう」





伸ばした手にやわらかい髪が触れる。


抱き寄せたぬくもりを感じて安堵の息をついた。





帰ってきた。





やっとここに・・・。





両手で抱きしめようとしたら左手に何か握っている。

今度はあっさりと指が開かれる。





掌にあったのは小さな指輪。








ああ、これだ。








これなんだ。








ずっと言いたかったのは。








あの戦いのとき、全て終わったら言おうって・・・。








全て終わったあとに・・この気持ちを。



























「ファリス、あのな・・・・」






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