あのときの光景が見事に重なった。

二度とこんな思いはごめんだと思っていたのに。

置いていかれる悲しみをまた味わうのか。





目の前が一気に暗くなった。







いいかな・・・。







もう疲れた。





もう、何も・・。









何もする気にならない。










「カケラ」





まったくどうなってやがる!
危うく丸焦げになるところだったぜ。
なんなんだあの隕石は!?
また世界破滅の危機かよ。
そんな冗談誰も笑わないぞ!!
焼き切れてしまったバンダナを掴むとシャドは起き上がった。
あちこち痛むが動けないほどではない。
つかんだその場からボロボロと落ちていく布を涙目で見つめた。

「ちくしょ〜コレ気に入ってたのに!」

顔を上げた彼は恐怖を憶えた。
目の前に広がる焼け爛れた大地。
一瞬にしてこんなに変わるものなのかと・・・。


あいつらは・・?


頭に浮かんだのは2人の顔。
すぐさま捜し始めたが焦げた臭いと土煙に視界を阻まれ見つけられない。
苛立って声を張り上げた。

「ステラ、ファリス!無・・・・・っ」
煙の向こうに紫色が見えた気がした。
火傷を負った足が痛んだが構わず走る。
ひらけた視界いたのは確かにファリスだった。
瞳に映った光景は信じがたいものだったけど。





「ステラ・・・・!!!」





思わず男の名を叫んだ。
もうわけがわからない。
どうやっても冷静にいられない自分がいた。

「ファリス、何があったんだ・・・おい!ファリス!!」

ファリスはどこか遠くを見ているようだった。
綺麗な若葉色の瞳に収まりきらない涙は流れ続けている。
その腕に抱かれている男は目を閉ざしたままぴくりとも動く気配がない。

最悪の状況しか想像できなかった。

もう一度ファリスの肩に手をかけようとしたその時、湧き出るように現れた殺気が体を襲う。
まだまだ視界は悪いが近くにいる。
それだけはわかった。



「ファリス立て!!・・・ちっくしょっっ」



時間が止まったように動かない2人のを掴むとシャドは叢へと飛び込んだ。
目の端には先程までいた場所に大きすぎる角が土を抉っていた。
自分の頭ほどの眼が禍々しくこちらを睨んでいる。




やばい!見られた!!




クッションの代わりに地面に転がったシャドは2人の重みを感じながら頭をフル回転させる。
状況は絶体絶命の大ピンチだ。
逃げてしまうのが一番早いだろう。
逃げ切れれば、の話だが。
まずファリスをどうにかしないと。
あいつはまだ生きてる。
それを置いていくほど汚い奴にはなりたくない。
できればステラも一緒に連れて帰りたい。
そのためにもファリスだった。


「ファリスっ目ェ覚ませ!」


体を激しく揺さ振った。
焦点の合わない瞳が何もない方向を見ている。



「頼むから起きてくれ!!」



頬を叩いてみたがやはり反応がない。
こんなことをしている間にも重い足音が着実に迫ってきている。
冷や汗が体中を滝のように流れていった。

















どうしろと言うんだ。




そんなの後味悪いじゃないか。




俺はすぐに切り替えられるほど器用でもないんだ。









こんなとこで死んでいい奴じゃないだろうお前は!














「起きろよ!俺に見捨てさせる気か!?」














ズン、と一際大きな音が耳に届いた。




ここまでか・・・っ。

俺がこの馬鹿でかいのを引きつけながら逃げるのはよしとして・・・あとは。
横目でファリスを見た。

あとは運次第か。

まぁ俺だって逃げ切れるかわかったもんじゃないしな。
大きく息を吐くと愛剣に力を込めた。


「生きてたら迎えにくるから期待せずに待っ・・・・・」



















信じられなかった。
繰り広げられる場景を目にしていても。
すぐには理解できなかった。





ゆっくりと伸びた腕は溢れ続ける涙の瞳へ。



横に流れた髪の隙間から見えたのはあまりにも優しい空色。



真っ青な瞳が緩やかな円弧を描いていた。





そこはまったく違う時が流れているように見えた。





綻んだ唇から心地良い声が溢れる。
























「ファ・・ス。どうした、また泣いているのか?」












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