突然だった。

あまりにも突然すぎて・・・。

考えるより先に体が動いた。





気がつけば包み込むように抱きしめて倒れこんだ。


何がいるかなんてわからない。





でも、それは確かに“有害”で、



腕の中のものは“大切”で。





守らなければ、


助けなければ・・・。







頭の中にはその言葉しか浮かんでいなかった。










「カケラ」





「なーにが楽しくて野宿なんかしないといけないんだか」

最初に不平を洩らしたのはシャドだった。
ファリスとステラは互いの顔を見合わせて溜め息をつく。
「誰も楽しいなんて言ってないよ」
「いい加減諦めろ。出なかったんだから仕方ない」
















日が南の中心を過ぎた頃3人は目撃証言の多い場所に着いた。
着いてまもなく辺りを散策してみた。
みつけたのは大きすぎる足跡、それだけだった。
探し回って見つけることが出来なかったので待ち伏せすることにした。
が、日が沈みかけても例の魔物が姿を見せることなく・・。
そこで話し合った結果、見通しのいいここにテントを張ることになった。
何があっても対応できるようにと。


それにも関わらずこの若作りヤロウは文句を言い始めたのだ。

「だってよ〜」
「うるさい奴は飯抜きだ。」

「・・・」

短剣を器用に使いながら実の皮を剥いているステラの一言にシャドの愚痴はピタリと止んだ。
流石だステラ、扱い方に慣れている。
やっぱり男は胃袋か。






静かになったのを確認したステラは作業を再開する。
ぶつ切りにした実を小さな鍋へ。
乱雑に鍋をかき混ぜる。
そこで彼は動きを止めた。


あれ・・ない。
どこに置いたっけ・・・。


キョロキョロと辺りを見渡すとファリスの隣にそれを見つけた。

「ファリスそれとって」

「あ・・ぁあ、はい」
いきなり話しかけられ、見ていたのがバレたのかと思ったファリスは声を裏返した。
変な声を出した彼女は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら横にあった調味料の袋を投げる。
その光景があまりにも可笑しく、ステラは笑いを堪えることが出来なかった。
つられてシャドが一笑する。
男2人に大笑いされ、ファリスはますます顔を赤くした。
それはもう茹蛸のように・・。

「そんなに笑わないくたっていいだろ!」
「い、いやぁ・・真っ赤な顔で凄まれてもなぁ、ステラくん」
「そうだな」

何度噛み殺そうとしても出来ないのにどうしろと言うのだ。

「しつこいなぁ!もう少し静かに・・・っ」

ファリスが半分怒りながら叫ぶ。
が、それは最後まで言い終わる前に途切れた。
周辺の雰囲気が急変した。

どうなってやがる・・。

先ほどまでの静がな平野はどこにも存在しない。
あるのは押しつぶされそうなくらいの圧力(プレッシャー)
どうにかなってしまうのじゃないと思った。
生唾を飲み干し、3人はゆっくりと己の愛剣へと手を伸ばした。


何かがいる。

とてつもなく強い何かが・・。


気配は1つ。

殺気を隠そうともせずそいつはそこにいた。
しばらくその場に佇んでいたが急に行動を起こし始めた。

見つかったか。

オレたちは視線を絡ませ、渋い表情を見せる。
でもこれではっきりした。
敵は魔物だ。
それも獰猛な肉食の・・。
オレたちの気配はわからなくても匂いで見つけたのだから。

奴か・・・例の魔物は。

ぐっと柄を握る手に力を入れた。

どこからくる?

ファリスはうるさい自分の鼓動を耳にしながら思考をめぐらせていた。
ちらりとステラとシャドを横目で見る。
シャドはそれなりに強い。
普通の奴に比べたらありえないくらいに。
しかし、奴に通じるかはわからない。
敵はそのくらいの強さだと思う。
握る剣に汗が滲んでいた。
ステラはどうだろう。
あいつの剣は昔とひとつも変わらない。
だけど・・魔法のことを何ひとつ憶えていなかった。
あいつは苦手だと言いつつ案外使えたのに。
普段はレナとクルルに任せっきりだったけど。
でもオレとは違い普通に使いこなせていた。
オレも一応魔法は全部覚えてはいるがいつでも使えるとは限らない。
何がいけないのか不発することが多い・・。

ああ!もっとマジメにやってりゃよかった!!
でもこうなった今では後悔してももう遅い。
地道に敵さんの体力を削っていくしか方法はない。
一発逆転はありえないのだから。
まともに魔法が使える奴がいれば戦局が変わっていたかもしれないのに。
オレは心の中で舌打ちした。














「相当強いな、くそっ震えてやがる」

シャドが冷たい汗を流しながら己の手を握り締めた。

「長期戦にないそうだ。体力が続くといいが・・・」

「いかに攻撃をくらわずに戦うかが問題だな」

ステラの冷静な分析にオレが補足をつける。

「シャド、いけるか?」

「なめんなよ。俺じゃ敵わないのはわかるが逃げ出すほど臆病でもねぇの!」

俺とステラに腕を伸ばした鶯色の髪の剣士はニヤリと悪餓鬼の笑みを見せた。

「お前らはおもいっきりやれ。フォローは全部任せろ」

自然に笑みが漏れていた。
このメンバーならやれる。
シャドの開かれた掌に拳を軽く当てた。
ステラも自分の腕を当てていた。






「いくぞ、1、2・・・」






「・・っ!」







寒気が走った。

何か・・・くる。

すごく嫌な何かが・・・・。

俺の本能が警報を鳴らしていた。









これは魔法の匂い。

魔気が大きい。


ヤバイ!



これはヤバイっ





でかいのが、くる。







「2人とも!ふせろぉっっ!!!」







叫んだ瞬間、瞳に映ったのは赤い隕石の軍団。












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