暗い、くらい、クライ。

ここはどこだ。

動かない体。

何故だ?

伝えないといけないことがあるんだ。

全てが終わった後に彼女に・・・。

なのに何故体が動かない。





体?

からだ?

それはなんだ・・。

俺はどうした。

オレ、おれとは何を意味する?

なんだろう。

何を伝えるつもりだった?

彼女は誰だ。

誰だ。

俺とは。









俺は何だ?










「カケラ」



最後の戦いは始まっていた。
全員が傷を負い、それに負けず戦っていた。

「クルル!あの傷を抉るからそこに呪文をぶちまけてくれ!!」
「うんっわかった!」

「攻撃がくるぞ!レナ、ゴーレムを頼む!」
「はい!!」

バッツが一人特攻を仕掛け、それに続きファリスも攻撃を開始した。
レナとクルルの呪文が完成するまでの時間稼ぎだ。
いつもこうして戦ってきた。
2人が特攻し、あとの2人が魔法を唱える。
そして勝利をもぎとってきた。
だから今日も勝つ。
そう思う。
しかし、ファリスは前を行く男を見て違和感を覚えていた。
何かがおかしい。
いつものバッツではないような気がする。
戦闘中に見せる力強さがさっきから全く見れない。
ちらっと後ろの2人を見ると懸命に呪文を唱えていた。
そのことに気づいているのは自分だけのようだ。



「くらえ!!」
バッツの攻撃がはいった。
尽かさずファリスも新しい傷口を抉る。
すると絶妙のタイミングでクルルのファイガが発動する。



「どうだ!?」
爆風に煽られながら彼女はネオエクスデスを睨みつけた。
目に沁みる煙の間から薄っすらと巨大な影が映し出される。
まだ倒れていない!!
何度このような攻撃を繰り返しているだろう。
それなのにまだ敵は悠然と立っている。
オレとバッツはまだ持つがレナとクルルが辛そうだ。
戦闘が始まってから強力な呪文を唱えっぱなしでそろそろ魔力が尽きかけている。
一旦退いて体勢を立て直すか、否。

「ファリス!危ないっ」
耳元でその声が聞こえたと思ったらオレはバッツに抱えられながら倒れこんだ。
衝撃破がオレの体を襲うが痛みがない。
上に乗る形で倒れているバッツを起こすと互いの体が彼の血で真紅に染まっていた。
「バッツ!?レナっレナ!急いで回復してくれ!!」
声を荒げて妹を呼ぶファリスの肩を軽く押すとバッツは立ち上がり走り出す。
後衛のところではなく前へ。



−滅びゆく肉体に暗黒神の名を刻め、始源の炎蘇らん−



彼の低い声が体に響いた。
あいつは殺る気だ。



「フレアよ、その炎を我が剣に灯せ!」
バッツの剣が紅く朱く輝く。
走るスピードはその速さを増すばかり。
彼は先ほど作ったばかりの傷に突進した。


「これで最後だ!エクスデス!!」



剣が刺さった瞬間鼓膜が破れるくらいの咆哮が聞こえてくる。
眩しい炎がその体に燃え広がった。
紅い閃光が辺りを埋め尽くしたと思うと熱風が襲う。
しばらくして、光がなくなるとエクスデスの姿はもうそこには無かった。








「バッツ!!!」
ファリスは倒れているバッツに駆け寄った。
傷だらけになった体を抱き上げ胸に耳を当てる。
微かに聞こえる鼓動に安心した。
「姉さん、そのままじっとしてて!」
息を切らして来たレナが慌てて回復呪文をつむぐ。
クルルは薬草をめいいっぱい出してきてバッツの体に巻きつけた。


「うっ・・ん、みんな?どうしたんだ。そんなに血相変えて」


「当たり前じゃない!自分の状況わかってるの!?」
「お兄ちゃーん、もう心配したんだからぁっっ」
「無茶しすぎだ!!このバカ!!!」


意識を取り戻した彼の第一声に怒声が三方から返る。
面を食らった顔を見せたバッツは素直に頭を下げた。










「俺たち、勝ったんだな」
「ああ」
「そうね」
「うん」


勝利の余韻に浸っていると辺りが輝きだした。
世界が元へと戻っていく様が映しだされている。
緑は鮮やかな色をだし、水は清められ、風と大地は蘇った。
クリスタルは神々しい光を取り戻し、新しく決まった場所で美しい姿を現していた。





「あっ飛竜!!」
クルルが立ち上がると指を指した。
指先に見えるのは確かに飛竜の姿だった。
「私たち帰れるのね!」
レナとクルルは嬉々とした表情で飛竜に向かって疲れを忘れたかのように駆け出した。
ファリスもそれにつられて歩き出す。
そんなみんなの姿を見て微かに笑みを漏らしたバッツは立ち上がろうと足に力を入れた瞬間がくんと倒れてしまった。
力が上手く入らない。

「バッツ!?どうかしたのかっ」
ファリスは振り返って驚いた。
数歩しか歩いていないのに自分と彼との距離が随分遠かったのだ。
バッツに近寄ろうとしても進まない。
だんだん遠ざかっていく速さのほうが上だった。
「バッツ、バッツ!!」
必死に呼びかけるが反応が見えない。
頭の中がおかしくなりそうだ。
どうして彼があんなに遠くにいるのかがわからなかった。
バッツに向かって走っているのに隣には飛竜がいた。
クルルもレナも大声を出してバッツを呼ぶが軽く動く程度にしか反応を見せない。
いつの間にか涙が溢れていた。
嫌な予感が頭を過ぎるのだ。
「バッツ起きろ!!!起きて!!!」
彼はよろよろとした動きで起き上がるとすっと指を指した。
オレたちの後ろに輝く光向けて。
唇が動いた。
行け、と。
オレは大きく首を振った。
何故お前を置いていかないといけないのか。
バッツは清々しく笑うと叫んだ。


「飛竜!行け!!俺の大事な宝物たちを守ってくれ」


その言葉に従うように飛竜はオレたちを摑み背に乗せると飛び立った。
「飛竜!飛竜戻ってぇ!!ねぇ、お願いっ」
「お願いよ飛竜!!バッツがっバッツがまだなの!あなたも憶えているでしょう!?」
飛竜から飛び降りようとしたファリスの体を2人が止める。
「ここから落ちたらどうなるかわかんないよ!!やめてファリス」
「だって、助けに行かないと・・・」
「姉さんしっかりして!」
「お前たちこそ、バッツがまだっ」
繋ぎとめられている体を捻り彼を見る。
だいぶと小さくなってしまった。
でもまだ見える。
今ならまだ間に合う気がした。
「レナ!クルル!離せ!!」
力任せに離そうとするが思ったよりも強い力でしがみつかれている。
「離せ!離すんだ!!バッツ!!!」
力いっぱい伸ばした先に右手を掲げる彼がいた。

自分に向かって優しく微笑んだ。


己の涙で前が、彼が見えなくなった。



愛しい彼が。











「オレを置いて行かないでぇっっ」













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